Friday, December 17, 2010

小澤征爾さんのドキュメンタリー

先日、小澤征爾さんのニューヨークカーネギーホールでの復帰コンサートの模様がニュースで報じられた。世界のマエストロ(あと一人上げるとズービン・メータ)の最高峰に君じる彼が自ら監督する「サイトウ・キネン・オーケストラ」と共に。海外で活躍する日本人の代表である彼が復帰したことは誠に喜ばしい。

そんな復帰コンサートに合わせて、NHKで彼の過去の登場ドキュメンタリー番組の再放送が今週放映されている。
まず、タングルウッド音楽祭における若者たちとの夏の出来事。タングルウッドはボストン郊外の避暑地で毎夏世界の若者音楽家がクラシック音楽の真髄に触れる1ヶ月間のドキュメンタリーであり、ボストンフィル音楽監督最後の年のドキュメンタリーである。
小澤スピリッツを注入された若者たちの何とも言えない幸福感がこちらにも伝わってくる。

次に「オペラへの情熱」。ここでもやはりタングルウッド音楽祭でのドキュメント。「ボレロ」で有名なラベルの庶民的オペラのリハーサル風景を捉えたドキュメント。
ここで関心したのは、歌手の歌い出しのタイミングである。「オケの音のでる直前に歌い出さなくてはならない。」と説く。何故か。人間の声の大きさには限界がありオーケストラの音量には到底及ばないこと。そして、言葉を伸ばせば母音となる。するとオーケストラの音量に埋没する。だから、すこし手前で歌い出す。すると子音がより明確になると。ドミンゲスやカレーラスなどオペラ界の重鎮は至極自然にこの事を行う。だから偉大なのだ、と。

次に、「ロストロポーヴィチ75歳 最期のドン・キホーテ」だ。
ロストロポーヴィチはロシア圧政時代のチェリストでその後亡命、世界的なチェリストである。
彼のフェイバリットチューンであるショスタコーヴィッチの「ドン・キホーテ」の演奏を通じて音符情報の裏に潜む作曲家の意図またはドン・キホーテの物語を背景に、事細やかなリハーサルに風景には感動すら覚える。

そして、最後に(昨日)彼の音楽の師匠齋藤秀雄先生との関わりを解いた番組内容であった。
そこには西洋音楽(クラシック音楽)のビート感・基質・地域性などの遺伝子が白紙のごとく無い日本人の方がクラシック音楽を演奏するとき優位になると。例えば、ドイツ人演奏家がドビュッシー・ラベルなどフランス・クラシック音楽を演奏する時、どうしても土着遺伝子が邪魔すると。

本日、明日と小澤征爾さんの番組が続く。誠に楽しみで、音楽を生業としている僕には誠に重要な課外授業となる。